使い心地にこだわる職人は、道具を自分でつくる
印章彫刻、ゴム印の手彫りには様々な道具が使われる。機械彫りが一般的となった現在でも、仕上げのため使われる印刀は印章店にとって必須のツール。彫り上がりを確認するための印褥(いんじょく)やバレンなど一般の方には馴染みがないものから懐かしいものまで使用されている。専用の道具はメーカーで製造されているものもあるが、製造が中止になったり、使い心地にこだわってハンコ職人が自作する道具もある。
ホリエでつくられる印章は、必ず職人の手が入る。人の手が入る理由はただ一つ。ハンコに対する使い手の想いをその印章に込めるためには機械では無理だからだ。印章彫刻に欠かせない道具たちを見ていると職人たちの想いが自然と聞こえてくる。
ホリエでつくられる印章は、必ず職人の手が入る。人の手が入る理由はただ一つ。ハンコに対する使い手の想いをその印章に込めるためには機械では無理だからだ。印章彫刻に欠かせない道具たちを見ていると職人たちの想いが自然と聞こえてくる。
印刀 【いんとう】
印章を彫る専門の刃物。鉄筆と呼ぶ人も。刃先が細いものから太い物まで5種類を使い分けている。印章彫刻機などで印章を彫った後は「判差し」と呼ばれる仕上げ刀を使い、文字の輪郭や枠を微調整する。
- ハサミ木 【はさみぎ】
- 小さい印章を彫るときに印材を固定するために用いる道具で、ハサミ木の上部に印材を挟み込む。手でしっかりと持て、彫りやすくなる。
- 巻き竹・巻き皮 【まきたけ・まきかわ】
- 大きい印章を彫るときに印材を固定するために用いる道具で、巻き竹の上部に印材を挟み込み、巻き皮を上からぐるぐる巻いて印材を固定する。販売はされていない、職人の手製の道具。
- 篆刻台 【てんこくだい】
- 印章を彫るときに印材を固定するために用いる道具。印床とも。名前の通 り、もともとは篆刻用だったものが、印章彫刻にも用いられるようになった。荒彫りに篆刻台、仕上げに棒台と使い分けることも。
- 棒台 【ぼうだい】
- 球状の固定台で、印章を彫るときに用いる。印章彫刻においては篆刻台よりも棒台の方が歴史的に古い。
- 指皮 【ゆびかわ】
- 印刀の下に揃える親指の痛みを軽減する、クッションの役割を果たす。
- 筆・墨・硯 【ふで・すみ・すずり】
- 判下の作業に必要な道具。筆は印章に文字を書くときに使われ、穂先が良く利いた小筆を用いる。墨は黒墨と朱墨の2種類で、朱墨は銀朱の純度が高い国産品が良質といわれている。
- 雁皮紙 【がんぴし】
- 薄い和紙。印章に文字を転写する時に使う。
- 印矩 【いんく】
- 捺印時、印章を曲げず真っ直ぐ捺すための定規。L字型、T字型のものが一般的。
- 鏡 【かがみ】
- 印章を真っ直ぐ押す時や、字入れ(文字を書くこと)の時に使う。
- 印泥(朱肉) 【いんでい(しゅにく)】
- 溶剤(油)と顔料(朱砂)を調合した朱液にパンヤやモグサなど繊維質を混ぜて練り上げたもの。近代ではスポンジにインクを染み込ませたタイプも普及した。
- トクサ板 【とくさいた】
- 現在の紙やすり。印章を彫る前に印面の凹凸を平らにしたり、仕上げ前の印面調整を行う時に使う。職人の手製のもの。
- 字割具 【じわりぐ】
- 丸型の印面に字入れ(文字を書くこと)するためのガイドラインを引く道具。直接文字を書く場合に使う。
- ノギス 【のぎす】
- 印材の印面の大きさを測る時に使う。
- 砥石 【といし】
- 印刀と仕上げ刀を研ぐ時に、荒い砥石から順番に使う。